「おばあさま!」
幼い声に、王妃アリーアは刺繍をしていた手を止めて顔を上げた。
青い瞳の小さな少年が駆け寄り彼女の足に飛びついた。愛らしい笑顔で見上げてくる。
「ロードスったら、走ってはダメと言ったでしょ」
こちらもまた幼い声の、けれどやけに大人びた口調の少女。
瞳は同じく青い色をしているけれど、性格の影響かどうか、少女の方が深く強い色をしている。
「いらっしゃい。久しぶりねぇ」
アリーアはにこにこと二人の孫を迎える。
「あらあら、レアリィもロードスも、また大きくなったわね」
「おばあさまったら、この間のお誕生日にも聞きましたわ。会うたびに仰るんですもの」
「そうだったかしら」
クスクスと笑い立ち上がると、彼女はロードスを抱き上げる。
いつも言っている、とレアリィは言うが、それでもやっぱり大きくなっていると彼女は思う。
「今日はお父様もお母様も一緒じゃないの?」
「うん、おしごとなの」
「司法会議があるって言ってました」
「そうなの。そういえばおじいさまもそんなこと言ってたかしら」
おっとりと微笑みながら、アリーアは夫と側近が何やら話していた今朝の様子を思い出した。
――レアリィとロードスの両親は、司法長と補佐をしている。
王女でありながら法を司る長を務める第三子にして第三王女であるシルク。その夫であり補佐を務めるスフィア。
それが二人の父母。加えて言うならば、レアリィとロードスには生後半年の弟もいる。
「おばあさま、おにわいこっ」
腕に抱いたロードスににこりと笑み、アリーアは思う。
――自分はなんて子に恵まれているのだろう。
九人もの子を持ち、その全員が元気に育ち、そして皆が皆、とてもいい子だ。
何人かはもう結婚していて、50にならないうちに、孫が5人もいる。
「幸せねぇ」
穏やかな日の光を浴びて呟く。
「おばあさま?」
二人の幼子が不思議そうに首を傾げる。その様子がまた可愛らしくて。
「幸せねぇ」
NOVEL