番外編 剣舞

CONSIDER // 剣舞


 16の誕生日を迎えた者は、一番近い次の成人の儀によって成人とされる。
 その儀式は年に二回。春と秋に行われる。

 十数人の少年少女が並んでいたが、皆緊張の面持ち。晴れ舞台ということと、その場の人物に。 一生に一度のこの儀式のために、誰もが着飾っていたが、中でも目立つその姿は特別だった。


 ――歓声に包まれ、中央に立つアイラは笑んだ。


『代表、アイラ=コルトック』


 会場が沸き立つ。舞台を一目見ようと多くの人々が集まっていた。
 前回の儀にも出ていた王女が何故、という声もあったが、そんなものはすぐに掻き消された。
 真紅のドレスに白薔薇をまとったその姿は気高く、見る者を魅了する。

 神官長の前にふわりと裾を揺らし膝を折ったアイラに、小さな小さな石が差し出された。
 神官が手早い慣れた動きで、彼女の両の耳たぶに装着した。


 これは成人の証。碧の石は瞳の色。


 他の出席者は前もって身に付けていて、今この時耳にしたのは代表であるアイラ一人だった。
 合図され、アイラはすっと立ち上がり、二歩下がる。長も含めた神官たちもその場を離れていく。

 そうして彼女は左手でドレスを軽く摘み上げ、右手を胸元に、首を僅かに傾げた。――コールダリィの正式な礼だ。
 音楽が流れ始める。人々はその曲調にざわめくが、次第に口をつぐみ、曲は強さを増していく。


 ――舞い。


 これもまた、成人の儀に欠かせないものだった。前回アイラは華舞を演じたのだが、今回のこれは剣舞。
 少女が、それも王女が舞ったという前例はなく、人々が驚くのも無理ないことだった。


 ふわり、紅の布が一枚アイラからはがれ飛ぶ。ドレスの丈が少し短くなり、
 軽く動きやすそうになった彼女は、あらかじめ床に置いてあった剣を拾い上げ、舞った。

 花弁が散り舞う。胸元の白薔薇、髪に飾られた赤と白。
 剣を引き、空へ掲げ、受け取るように振り。


 二本の剣が合わさる。


 真紅の薔薇色に、薄桃の桜色が混じり、派手であった舞いに落ち着きが加わる。
 二人の少女は軽やかに華やかに。


 また、一本の剣が加わる。


 赤、桜、白、三色の咲き乱れ。くるりと回っては、はらりと離れる。

 曲は激しさを増し、白の剣が空気を斬り裂いてゆく。
 型の舞いの中に一人、鋭さを抱いた動きで。二つの花はそれを包むようにゆったりと。

 主で舞うのがまた白から赤へと移る。
 皆の視界で三種の花がちらりひらりと舞い踊る。



 ふ、とまとう布が浮かび上がり、曲は終わりを迎えた。












NOVEL