番外編 明日
 昔々或る所に、親に閉じ込められた王子様がいました。
 名前はアストーク。正当な第一王位継承者となるべき子供でした。


 ――禁忌の力。

 他とは違う不思議な力を持って生まれたがために、呪われた子、禁忌の子として
 隔離され、いないものとして扱われた。
 不憫に思った世話を任されていた老婆は、夫とともに王子を外へと連れ出した。

 国王夫妻は焦ったが、どうせのたれ死ぬだろうと思い、探索を打ち切った。
 禁忌の力で一人、消えたと思ったのだ。


 ――外の世界。


 老夫婦には王子と同じ年頃の孫がいて、二人は兄弟のように育っていった。
 二人は二つ、年が違っていたけれど、その頃体格はほとんど同じだった。
 庶民の子供と閉じ込められていた子供、だったから。ともに大きくはなかった。
 イラテイトは貧富の差が余所より大きいのだと、二人は成長して知ることになる。


 ――二人きり。


 老夫婦も彼らの子も亡くなってしまい、兄弟二人きりになった。

「出て行こうかと思ってたんだけどね」
 エイファルンは微笑って、辛さも見せず、そう言った。

「でもやっぱりシィを放っておけないし」
 祖父も祖母もいなくなってしまって、家にいる理由もないかと思って、傍にいると逆に 迷惑をかけるかとも考えて。……だけど思い直して。

「俺さ、盗賊でもやろーかってな」
 シライザは軽く笑った。なんでもないことのように言った。

「お前には止められるかもだけど」
 祖母も祖父もいなくなってしまって、収入もあまりなくて、出費の方が多くて、 足しにでもなればいいと考えて。……二人生きるために。


「シィ。危ないことは――」

 ――エイファルン。
 とても優しい心を持って。自分に何かあっても微笑している、そんな人間。

「わーかってるって。お前こそな。エイル」

 ――シライザ。
 強く真っ直ぐな心を持って。決して涙を見せることない、そんな人間。


 ――二人。
 エイファルンとシライザは、常に二人だった。兄弟となった、友となった、あの日から。


 エイファルンは雑貨商となり、シライザは盗賊となり、互いに働いた。
 シライザの盗った物品は、彼自身の当座の生活資金にあてる分の他は、二人の自宅か彼のアジトに置かれたまま。
 問題のある金持ちからしか盗らないと決めていたが、別に豪遊したいわけでもないし。

 毎日が過ごせればそれで。

 エイファルンはシライザの持ってくる物は箱に詰めるなどし、家の奥にしまい込んでいった。
 今手元に置いているのは、因縁のある某宝剣だけ。
 ともにそれぞれ稼いではいたが、ともに質素とも言える程度しか使わない。


 ――将来。


 いつかのために、と思っている。
 二人がもっと年を重ねて、結婚して、子供が出来て、年を取って。


 ――お互い。


 二人が互いに、その時の相手の為に、と考えているのは、実はまだ互いに気付いていない。
 自分は一人で年を取っていくから、と互いに考えていて。
 向こうはいつか家庭を持ってくれて、と互いに希望して。


 ――そうして。


 互いに気付いたら、二人して笑う。何を考えているんだ、馬鹿だな、と。
 互いを、自分を、おかしく思って、笑う。







 一緒に未来を考えるのだ。

 二人がともに、揃って幸福な明日を見て。

 死ぬまで―――支え合って生きよう。












NOVEL