空は青く青く、そして高く澄み渡っていた。
――鐘が高らかに鳴り響く。
夏を前に、ルークスティン=イレイクとメイファ=リーヴァの結婚式が執り行われた。
慌しい今何故かというと、「オルスもそれを望んでいるだろうから」とレイシアが主張したためだった。
きっと彼が見つかることはないだろう。自らの意思で出てこない限りは……。
それならばまだ近くに潜んでいる可能性に賭けて、と。
皆の前に現れたのは、白に青を織り込んだ服装のルークと純白のドレスに身を包んだメイファ。
コールダリィでは嫁入り、婿入りする側は白、迎える側はその家を象徴する色を着る。
イレイク家では白地に青。今でこそ血が混じり合いそれぞれの色の瞳がいるけれど、昔は青い瞳ばかりの家系だったため、この色となったと考えられている。
「汝ら、互いを愛しともに在り続けることを誓いますか」
ロイジャー=ナンドスが選んだ老神父が誓いの言葉を問いかける。二人は視線を交わし、応える。
「剣にかけて、命ある限り愛し続けます」
「太陽に、月に、そして心に、誓います。いつまでも愛し傍にいることを」
互いに向かい合った二人は、ともにピアスを片耳にしかしていない。この国の風習で、成人の儀を迎えると瞳と同色のピアスを両耳に、そして結婚式で片方ずつを交換するのだ。それが、既婚の証。
ルークの青と、メイファの緑。瞳が潤み、口付けが交わされた。
二人が出会って十一年、時間を共有するようになって七年。
――幼く淡い想いから始まった恋だった。
寄り添って微笑みあう。語り継がれる国初の恋にも負けないだろう、幸せに満ちた光景だった。
――はらり一枚の葉が舞い落ちる。
それはどこからかのメッセージだったのかもしれない。
風もなく、音もなく、静かにそれは大地へと。
ほう、とため息が漏れる。式は先ほど終わり、皆それぞれに余韻に浸っている。
アイラは教会から離れていない、木々に囲まれた静かなベンチにブレスと腰掛けていた。
「綺麗だったなぁ、メイファ」
皆涙ぐんでいたけれど、レイシアの泣き笑いはすごかった。もう前なんて見えなかったんじゃないだろうか。
ヤマトに支えられ、シライザにからかわれながら歩いて行ったけれど。
「幸せそうだった」
「そうだな」
いつかはこの日が来るとわかっていた。いや願っていた。
いつもあまり着飾らない彼女の美しいドレス姿。けれど何よりメイファ自身が輝いていた。
彼らの日常はがらりと変わるわけではないけれど、これからはルークとメイファ、二人手を取り合って生きていく。
「――あたしも幸せになりたいなー」
ついついそう思ってしまう。簡単に叶うものではないとわかっているけれど。現に彼は口を閉ざしている。
彼女が王女でなくなれば、彼が騎士でなくなれば、貴族同士と同じで可能だろうけれど。まだしばらくは。
「ね、ブレス。キスして?」
今は傍にいられる幸せを感じていよう――
「ダメだ」
「なんでよぉ。あたしのこと好きって言ってくれたのに」
――愛している、と。
思い出すと胸があたたかくなる。息苦しいほどに幸せな。
「それとこれとは別。それもこんな場所で」
「いいじゃない、大丈夫よ。ね、ブレス」
「アイラ……」
やはり彼女には勝てないブレスは、ため息を吐きながらもそっと頬に触れ、唇に触れ、そして――
吐息がかかるほどに近づいた二人……は動きを止める。音が、聞こえた。すぐそこで。
……互いに不意を突かれたというものだろう。
「国王陛下……」
「お父さま!?」
そこには驚きに固まり立ち尽くす国王フリッツの姿があった。娘を探しに来たのだろうが、きっともうそんなことは頭にないだろう。
「アイラ……ブレス……?」
これが親父ならまた笑ったんだろうかと現実逃避気味にブレスは思った。
アイラは赤くなればいいのか青くなればいいのかもわからず、父娘は見詰め合う。
「何を――――」
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