日々は慌しく過ぎていった。まるで夢か幻かのようでもあった。
ヤマトは城に、王家に、仕えることとなり、また、その逆の者もいた……。
日常に戻ったアイラたちだったが、そこへ響く足音。
扉が開け放たれ、王女であり部屋の主でもあるアイラに非礼を詫びた騎士たちは、有無を言わせずオルスを連れ去って行った。
「お父さま……!!」
アイラは国王の政務室へと飛び込んだ。騎士たちが同僚といえるオルスをあんな雰囲気で連れて行くなど、父王か誰かの命令としか考えられなかったからだ。
そこには奥に腰掛けた国王と、寄り添うように立つ不安げな王妃、大臣、騎士数名とオルスがいた。
王はただ首を振る。高位と見える騎士が無表情に口を開く。
「――オルス=タジットには西国ウィルシォの英雄とされるゴルダ=ガルーゼンへの殺害意思ありとして嫌疑がかかっています」
それは罪を告げる言葉だった。彼を放置しておくわけにはいかないと。
話を理解することが出来ず、否理解することを拒む脳と信じられない心に、声を出す間も与えず、騎士は続ける。
「また、他にも彼が関与、殺害したのではと思われる事件が見つかりました」
「そんな、オルスが……まさか……」
……彼らは一体何を言っているんだろう。
ずっとアイラの傍で騎士であり続けた彼にそんなことが出来るはずもないのに。
「オルスはアイラの騎士としてよくやってきてくれました。このままでいられたらと、思うけれど……」
その言葉に、母でさえも彼を罪人と思っているのだと、知る。苦しみながらも。
オルスは俯き、表情もなく……
「英雄って人をなんでオルスが殺そうだなんて思うんですか……!?」
アイラ、メイファと同じように顔色をなくしながらレイシアが半ば叫ぶように問う。
「オルス、どうなんだ」
「お前の言葉が聞きたい」
ブレスとルークが静かに、オルス自身へ問う。
オルスは固まってしまったかのような顔を歪める。
彼らにこんな自分を見られたく、知られたく、ないのに――。
「違う、違うよ。信じて……」
――信じて。
そんな言葉を、自分が口にして許されるのだろうかと、オルスは思った。
この手はあまりにも多くの血で汚れてしまった。
オルスは騎士だ。人を傷つけることも当然ある。けれどその役目以上に人を殺めた。仕事としてではなく、自らの気持ちのために。己の意思で。
それは――罪なのだろうか。
別の世であったなら、それは違ったかもしれない。また別の世であったなら、今以上の大罪とされただろうか。
「オルスが違うって言うなら、あたしはオルスを信じるわ」
違う。違うけれど、違う。確かに彼はゴルダ=ガルーゼンを殺害したのだ。もう何年も前になるけれど。
"英雄"ではなく、祖父を殺した、そして恐らくリーヴァ夫妻をも殺した、"殺人鬼"だったけれど。
そして、人を殺めてきたのも事実で。
「私も、オルスさまを信じます」
「うん、仲間だもん。俺たちが信じないとね」
それでもこの人たちは自分を信じると言ってくれる。なんて、なんて……………バカなのだろう、この人たちは。
「国王陛下。我々の意見は何があろうと変わりません」
「彼が無実であることを、私たちは主張します」
自分には眩しすぎて。痛くて。あたたかさがこんなにも、痛い―――
牢に追い立てられていったオルスは、罪罰の判決が下されるまでをそこで過ごすことになった。
そして彼は――
―――姿を消した。
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