「変わらず、ですね」
ヤマトが苦笑した。真犯人はと探し始めて幾日か。
城内で書物を調べても、城下で色々探ってみても、……時間が経ちすぎている。
それぞれ手ぶらでヤマトの部屋に集まったのだった。
「手がかりもほとんどなしじゃなー」
結局シライザはまた居ついてしまい、アイラたちの手伝いをさせられていた。役に立ったかは謎だが。
「682年だろ? てことは十二年前……」
「十二年前だとあたしは4歳、ね。そう考えると昔って感じがしちゃうわね」
「私で6歳、オルスで5歳、ですからね。アイラさまは記憶もあまりあられないくらいでしょう」
――幼い頃の記憶。
彼らにとって平和であっただけの記憶などないけれど。それぞれに日々を生き抜いてきた。
前年にアイラとブレスは出会い、翌年にはルークの登城、オルスの奉公、ルークとメイファの出会いなどがあったのだが。
「―――」
がたりと音がして。視線が集まる。思わず立ち上がってしまった様子で、周囲の反応に気付かないまま、再び音を立てて椅子へと腰が落ちた。
「オルス?」
それでも意識はどこにあったのか。レイシアの声に現実に引き戻されたようで。
「……何でもない……」
ぼーっとして見えるのはいつものオルスだったけれど、"何でもない"ようには見えないのだけれど……
聞いたところで何も言わないのはわかりきっている。
「なあ、」
逆向きに椅子に座り、背もたれを前に体重を乗せたシライザが口を開く。
「兄サマが犯人かもしれないってことでメイファは苦しんでたんだろ? ならそうじゃなかったってわかっただけでもよかったじゃねーか。再会出来たんだし?」
確かにメイファは再会後、悪夢に襲われることはなくなった。
彼でないならじゃあ誰がという思いは残るけれど、元々戻らぬ過去と思っていたことだ。
「きっと犯人は死んじまってるよ。そーゆーヤツは天罰が下るってもんだ」
なあ、とオルスに同意を求める。ぎこちないながらも彼は応えた。
「時間……経ってるもんね……」
「だからァ、もうちょい調べてそれでも見つからなかったら、俺は終わりにすることをススメるね」
軽い口調で、けれど真剣に考えての言葉だとわかる。
"気に入った"と彼に言われたのはもうどれくらい前かと思ってしまう。まだ一年も経ってはいないのに。
彼とはいろんな騒動とともに関わった。彼は彼なりに、言葉通り、アイラたちを気にかけているのだろう。
アイラが考えながら、当事者である少女たちを見つめる。
「メイファとレイシア、ヤマトがいいならあたしは……」
「ああ」
アイラとブレス、ルーク、オルスも同じ瞳で。二人は、そして自分も、幸せだなとヤマトは思う。
こんなにも愛される人間に育って、誇らしいと泣きそうになりながら。
「―――ぼくはね、」
あたたかい。あの頃のようなあたたかい居場所を手に入れているのなら。
「二人には未来を生きてほしいと思っているよ」
その世界を壊さないで。どうか幸せでいて。
きっと……彼らの両親もそれを望んでいるから。
「兄さま……」
過去は懐かしむものであってほしい。囚われるのでなく。そう、願う。
「ほらほら、お兄サマもそう言ってンだからっ」
――戻らぬことを悔やむより、前へ進む強さに変えて。
あの日々にはもう帰れない。だからこそ生きていけるのかもしれない。
「ルークくん、メイファのことを頼みます」
黒い瞳が優しくて、ルークはメイファの手を握る。
「―――はい」
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