明るい笑い声が耳の奥弾けて、メイファは目が覚めた。
――差し込む日差しのように明るくあたたかかった。
"兄さま"を見つけ出そうと、皆で話した結果、決まった。
けれどもう十年以上も前のこと。……情報すら得られないのが現状だった。
公務の合間を見つけては、当時の情報紙を漁ったり、人を訪ねたりを繰り返し、すでに月が替わり、やわらかに咲いていた花は散り、空は高く晴れ渡っていた。
「アイラ、俺たちの宿舎へ来てくれ」
雑務を片付けるアイラたちの元へ、ブレスが飛び込んできた。
「どうしたんですか、ブレスさん」
「お前たちも」
言われ、メイファとレイシアは顔を見合わせ、アイラとオルスとともにブレスの後を追いかけた。
辿り着いた宿舎にはルークと男の姿があり――自分たちの住む場所なのにブレスが慎重にノックをした理由がわかった――アイラは目を丸くした。
「アレス叔父さま……!?」
「ああ、アイラ。久しぶりだな」
「え、ええ。でも叔父さまがどうして……」
アレス=コルトックとは国王フリッツの弟で、アイラにとって実の叔父だった。
似ているところも似ていないところもあるが、雰囲気は自他共に認めるほど似ている。
「アレスさまは王弟であられながら騎士団を率いられていましたから。今日は指導に来られていたのです」
「そうしたら、突然つかまってな」
軽く笑んでみせるアレスだったが、ルークとブレスの表情は変わらず、メイファとレイシアを示した。
二人を見て彼は瞬き微笑を浮かべた。
「二人のことを陛下にお知らせになられたのはアレスさまだと伺いました」
シーライス暦682年――
コールダリィ国王夫妻フリッツとアリーアは、遠い血縁にあたる幼い子供を養子に迎えた。
繋がりが近いわけでなく、仕事の関係などで何度か会っただけの彼らを引き取ったのは、末娘と同じ年頃の彼らが両親を失ったことを不憫に思ったからだ。
突然リーヴァ夫妻との連絡が途絶え、おかしいと感じた。そして使者として向かったのがアレス。
彼自身もまた、数ヶ月と連絡のつかぬ彼らが気になっていたのだ。
――幼い双子は近所の家にいた。
その家の住人の話によると、リーヴァ家の屋敷は燃え、屋根は落ち、壁も崩れ、二人だけが隅にいたという。
保護されてはいたものの、二人は警戒の眼差しでアレスを迎えた。彼はにこりと笑んでみせる。
「わたしはアレスという……王さまを知っているね、王さまの弟なんだ」
寄り添い怯え震える二人を怖がらせないように一定の距離を置いたまま。
「メイファとレイシアだよね。わたしとお城に行かないか?」
レイシアはよほど怖いめに遭ったのか怯えるばかりですすり泣き、けれどメイファはためらった後レイシアとアレスの顔を見て、微笑んだ。――そして城へと迎えられた。
彼らは青年とも言える年頃の少年と暮らしていたのを目撃されている。
けれど事件後その姿はどこにもなく、子供たちはショックからかそのことについて話すことはなかった。
穏やかな少年だったという。黒い髪に黒い瞳、見慣れぬ容姿。
名は、ヤマト=カムイ。
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NOVEL