――闇に火の粉が舞う。
身動き取れずにそれを、それだけを、眺めて。
記憶ははっきりしない。膜がかかっているような、ノイズが混じるような。
けれど、世界が壊れたことは、確かで。
残された今までと違う世界に二人きり。
はっきりしているのはそのことと、両親がもうどこにもいないという事実。
……事故などではない。何か不思議な力が、そこにはあった。
部屋は静まり返っていた。蝶がひらと舞う音さえ聞き取れそうなほどに。
メイファは主観的になりすぎないようにあくまでも淡々と話したが、その内容が変わるわけもなく。
レイシアが、震えた。
「……そん、な……」
彼が何も覚えていないことは見るからに明らかだった。
他の者もそんな話を耳にしたことはないのだろう、ただただ彼らを見守っていた。
メイファは顔を上げず、掛ける言葉も見つからない。
「――夢、って」
沈黙をオルスが切り裂く。メイファの見る夢とは……記憶なのか、単なる夢幻なのか。
彼女もわからないと言うが、話を聞く限りただの夢ではなさそうだ。
「不思議な力というのは魔導の力なのか」
「……わかりませんが、そうかもしれません」
ちくりと胸に痛みが走る。
――真っ赤な世界に立ち尽くす影がある。振り返らない、それは、誰……
「ねえ」
アイラが考え込むように口を開いた。
「倒れた時、確かメイファ何か言っていたわよね」
ルークとオルスが顔を見合わせる。あの時は駆け寄ることしか考えられずにいたけれど。
ぽつり、レイシアが呟く。
「――にいさま――」
「兄……?」
ブレスが訝しげな顔になる。それもそのはず、メイファとレイシアに他に兄弟姉妹はいない。それは皆が知っている。
「本当の、とは限らないよ。おじさんをそう呼んでたとか、近所の子供とか?」
アイラも甥や姪に姉と呼ばれていたりする。そういう可能性もあるとオルスが指摘する。
「陛下にお尋ねしよう」
メイファを支え沈黙を守っていたルークが立ち上がった。
国王は何も知らなかった。
けれど殺されたという話はなかったというが、事故というにもおかしな状態だったらしいと耳に入れていた、と……
両親ともに身寄りがなかったらしく、家族四人で暮らしていた。
そのためメイファとレイシアを見つけたのは近所の一家だった。
ただ引っかかったのは――
しばらく共に暮らしていた黒髪の少年の姿がなく、遺体も確認されなかった、と。
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