ひらりひらりはらはらと、花吹雪が視界に広がる。
由梨姫の提案した桜見、どうせなら観光も兼ねて城の外へ出てみてはどうかとの
アリーアの言葉で、アイラたちは街から外れた草地にきていた。
コールダリィにも桜は咲いているとはいえ、どこにでもあるわけではなく、
この時期に咲く薄紅の花は多くあるものの、"桜"と呼べるものは一部なのだ。
ピクニックのように敷物の上に腰を下ろし、お茶とお菓子を広げる。もうすぐお茶の時間だからちょうどいい。
座っているのはアイラとメイファ、そして由梨の三人だった。
他国の姫がいるため、騎士たちは周囲を警戒するように立っている。威嚇の意味もあるだろう。
ひと気のない場所ではあるけれど、野盗の類が出ないとも限らない。
アイラとメイファだけを守ろうとするなら、彼女たちは王女と側近という立場ながら出歩くこともある自国なので
そこまで気を張ることはしないのだが、由梨は専属の護衛がいるものの、二人揃って不案内だ。小さな何かも、起こすわけにはいかない。
「ユリさま、桜をかたどったクッキーです。どうぞ」
バスケットから取り出し皿に並べたクッキーを手渡し、メイファは保温瓶からカップへお茶を注ぐ。
「赤いお茶ね。緑のものは……ないのかしら」
「申し訳ありません。こちらではなかなか……」
「そう、遠いのだものね、仕方がないわ。ごめんなさいね」
「いえ」
雰囲気はとてもいいというわけではないけれど、間に座るメイファが上手くやっているおかげで桜見という名のお茶会は和やかに進んでく。
けれど……由梨が不意に空を見上げた。
「あら、あれは……?」
少し離れた場所から立ち上る、白か灰かという色の……
「煙……!? 何か燃えてる!?」
細く細く見えるけれど、弱まることなく空へと続く煙。レイシアは焦り仲間たちに振り返る。
ブレスはひとつ頷き口を開く。
「レイシア」
「はいっ」
何事が起きているのか確認に走るレイシア。彼の乗る栗色の馬が遠ざかっていった。
方角からすると街の広場に近いかもしれない。そこには噴水があるので火事か何かだとしてもすぐに消火出来るだろう。
皆がそちらへ目を向けていると、どこからか叫び声が響いてきた。
「今の、悲鳴でしょうか……っ」
「今度は何!?」
「オルス」
「はい」
この場を離れるわけにはいかないブレスが指示を出す。
これでまた近くで何かが起きればルークをやることになってしまう。ここを手薄にしたくはないのだが、
目と鼻ほどの距離で事件でもあったのなら巻き込まれる可能性もある。放置しておくわけにもいかない。
普段ならばこんなことはないのに、こんな時に限って。
そして――二度あることは、三度あった。
「悪い、ブレス。すぐに戻る」
「ああ」
ルークまでもがレイシアやオルスとはまた違う方向へ駆けて行った。
残ったのはアイラ、メイファ、由梨、龍之介、ブレスの五人。守り手は二人。
少女たちの声も薄らいでいく。
「――何!?」
メイファがはっと目を見開く。続いてブレスと龍之介も身構える。
次第にアイラと由梨の目にも見え始めた。……数多くの、馬が。
メイファは魔導の力で騎士たちの抜けた穴を埋めようと、遠くまで神経を巡らせていたのだ。
馬はどんどんとこちらへ向かってきていた。
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