「ルークさま……?」
頬を色付かせ目を丸く見開いた少女が……彼女が呼ぶ、自分の名を。
やわらかなやわらかな、優しい、愛しい、その声。
ルークは細い体を抱き締めた。
「ルークさま……!?」
無言で彼がそうすることにメイファは慌てた。何がなんだかもわからない。
「…………んで……」
「え……?」
「よんで……もっと名前、呼んで……」
――君の声でこの名を。
愛しいその声を、聞いていたい。それが自分の名であったなら、もっと……。
メイファはそっと、その背に腕を回した。
「ルークさま。ルークさま……」
包み込む。穏やかな日差しのように。
「―――――……っ」
ノックがあり、扉が開き、入ってきた少女は駆け出し、抱きついた。
泣き笑いのアイラに微笑み返す姉の姿に、レイシアも歩み寄る。
「もう馬鹿っ! 大変だったのよ!?」
「申し訳ありません……ルークさまから聞きました」
「そうよ……っ!」
怒る口調で言いながらも声は震えていて。存在を確かめるように触れている。
そこに立ったルークがレイシアの名を呼び。アイラが少し離れ、メイファが微笑う。
「レイ」
手を伸ばす。お互いに。触れる。
「メイ……」
「……大丈夫よ。泣かないで、大丈夫」
肩に頭を寄せたレイシアの体が震える。メイファが優しく髪を撫でる。
うん、うんと頷く。
「……おかえり……」
そして――
さようなら。
幼い恋の終わりを、感じた。
「―――――諦めた、のか?」
ブレスの呟きに、返る声はない。
オルスはただメイファたちを見ているだけ。反応もない。
――庭に、動く様子も見せず立っていたオルス。
彼を見つけたとき、彼は無言で、城壁を、その向こうを、見ていた。
あの男はどうしたのか、とは聞いていない。振り向いた彼が、とても脆く見えたから。
危なげで、声を掛けるのも躊躇われたほどで。
……こんな状態の彼を、ブレスは以前にも見たことがあった。
それはもう何年も前で、あまり覚えてもいないのだけれど。
城に上がってまだ間もない頃だった。仲間たちと出会う前。
ナンドス家に仕えていた少年。自分より年下で、一緒に剣を学んだ。
下働きの子供に何故と周りは言っていたようだったが、才を見込んだのだと当主は笑っていた。
「まあ、いいか」
メイファは目覚めたのだし。
みんなは、無事なのだし。
だから今は。
――これで、終わったのだと思っていよう。
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