「イレイク!!」
「ルークさま!?」
騎士が侍女が、叫ぶ。
思わず身を守り閉じてしまった目を開くと、棚は収まっていた書物をばらまき、
クローゼットは扉を開いたまま倒れていた。
その向こうに膝をついた姿。
「大丈夫か」
ブレス、そしてルークの姿に安堵からか、誰かの息がもれる。
膝をついたままのルークを、腕をひいて立たせ、ブレスはレイシアに向かい合う。
レイシアは戸惑いのような表情を浮かべる。
「ブレスさん……」
「レイシア」
一歩、踏み出す。ルークとオルスが見つめる。
「レイシア」
「……来ないで……」
一歩、また一歩。ブレスは歩み。レイシアは後退る。
鋭い音がし、窓の一部が割れたことを知る。重い音をたてて、家具が揺れる。
「ナンドス、悪いが――」
「いいから」
「こちらこそすみません、行って下さい」
声をかけたブレスではなくオルスとルークに促され、騎士たちは侍女を連れて扉の外に出た。
今のこの状態に他者を巻き込むわけにはいかない。
ブレスはレイシアの肩を掴み、その強さに少年は顔を歪めた。
「レイシア。何かあるなら言え。そう教えたな」
普段多く口を開くことのないブレスだけれど。
同じ騎士として働くことになった時、彼が一番最初に言ったことだった。
必要なことだけは必ず言うように。務めに支障をきたす可能性がある場合もまた。
――常のように変わらない表情。
「言いたいことは言え。そんな形で吐き出すな」
このままだと、とオルスは思った。このままだとレイシアは解雇ということになってしまうだろう。
王家の血を含み、可愛がられているといっても、問題を起こしては。
「レイシア! 私に言いたいことがあるんだろう!」
「ルーク……」
歩み寄りはせず、ルークは言い放つ。少年を刺激したくないと思い、けれど聞かねば、言わねばならぬと思う。
オルスは人の気配のしだした扉に滑り寄る。
「レイシ――」
「メイが!!」
レイシアが震えながらルークを睨んだ。
「メイファがこんなことになったのも、俺が苦しいのも、ルークさんが悪いから……っ」
全部。何もかも。憎しみが込み上げた。静かな瞳に苛立つ。
何故この人は。そんな目で。そんな表情で。見つめてくるのか。逸らすことなく。
穏やかな、哀しみと優しさの見える瞳で。
「――――――――そうだな」
緑の瞳が見開かれる。
――認めた。自分の言葉を。
けれど何故か、苛立ちは募っていった。自分で望んでした行動の結果なのに。
腹が立って、どこか……何故か無性に悲しくて、寂しくて。
こんなにも、あんなにも、憎み恨む人なのに……。
「ルークさんなんか大嫌いだ!!」
言葉が滑り出る。
……でも、何かがぷちりと変わった気が遠くして。
「メイの……メイのバカぁっ!!」
――バカは自分だ。
色のついた霧が晴れていく。残るのは淡い色。
「起きてよ、早く目を覚ましてよ、メイっ!!」
淡い淡い、薄いけれど決して消えない色。
何があってもそれだけは確かに残る、想い。
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NOVEL