第49話 新たなる獲物
 思ったよりも使えなかった。そう彼は思った。

(だがまぁ、多少なり傷はつけた。――痛いだろう?)

 最初はただ奪ってやろうかとも考えた。けれど、それだけだときっと以前と同じで、 仲間どもと揃って取り返そうとするだけだろうと思った。
 そんなものはつまらない。

 殺すか、とも考えた。けれど面白くない。
 いたぶるのだ。傷つけるのだ。――それが望み。


(気が済むまで殺さない)


 暗い闇の中で笑うその姿を見る者は誰もいない。その歪んだ笑み。
 声を聞く者もない。狂った玩具が音を立てるような笑い声を。


(お前の為なら何でもしてやるよ)












 次の獲物、とエーヴィは王女、少年騎士、もう一人の騎士、と候補をあげていた。
 ルークはもちろん論外だし、ブレスは厄介そうだからだ。

「さぁて、どいつにするかな……」

 コールダリィ城内の庭にある背の高い木。いつか城よりも成長するのではと思えてしまうほどの、 その木に彼はいた。下からは見えない高さ、しかも不可視の術をかけて。
 そこから見えるのは、窓と壁ばかり。けれど耳にはめ込んだ石に力を注いでいるため、 そこから目へと力を流し、透視の術を使うことが出来るのだ。

「王女サマ……は、あのデカブツがずっとついてる、か」
 クッションに埋もれるように突っ伏す彼女の傍らにはブレス。
 メイファと同じく、彼女一人を捕らえようと思えば可能ではあるだろうけれど。

「オル……―――っ」

 振り向いた。
 視線を移したその瞬間に。


 ――まさか。


(見えるワケがねェんだ。気配を……? まさか)

 どんな人間だ、それは。有り得ない。
 けれど、その人物は確かに。

(こっちを見てる、見てやがる)

 嫌な汗が肌を伝う。気持ち悪い。
 ダメだと思った。こいつは選べない。こいつだけは。

 剣に手をかけ廊下に立つその姿から目を逸らすが、ぞくりと寒気が止まらない。
 気温や風の冷たさは術で防いでいるというのに。

 ――意識を、無理に、外す。


「――――ガキ、見っけ」


 城の端に位置する建物の中、大量の本に囲まれ、必死にページを繰る少年の姿。

 やっぱりあいつだ。

 そう、決めた。












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