「おはよう、レイ」
あの時の微笑みを思い出す。久しぶりに笑った顔を見た、と思った。
前日に目をはらして帰ってきたから、その日は喋らなかったから、心配していたのだけど。
やっと、夢から覚めた朝を迎えた気がした――
「レイシア……?」
突然の訪問――とは言え、部屋は隣だが――と言葉に、ルークは鈍った思考を
叩き起こしながら、ベッドにでも腰掛けるよう促した。
イスも机とセットであるにはあるのだが、一つしかなく場所も遠い。近い位置でなければ話をしにくい。
……というのがいつもの彼の思考だが、今は理由もないかもしれない。
『メイファを助けて』
そう言った。メイファを助ける? どうにかしたい気持ちは同じだけれど。
「……メイはね、」
似ていると、よく言う。同じ色の髪と瞳。知らぬ者が見れば間違えてしまうかもしれない。
アイラともよく似ている。真っ直ぐ前を見つめる姿は尚。いざという時は身代わりに、と昔囁かれていたのも頷けてしまう。
遠縁や二卵性であるとはとても思えないほどに。
それでも、自分が間違えることなどありはしないが。
「ルークさんのこと、ずっと好きだったんだよ。……多分、あの時から」
「どうしたんだ、急に」
「ここに来て、まだ間もなくて、俺は寂しくて、わけわかんなくて、泣いてばっかりで」
どうして泣いていたんだろう。後で悔やむこともあった。
幼い子供が二人、親もなく知らない場所に連れて来られれば、それは当然のことなのかもしれないけれど。
それで、まだ同じで幼い姉に、負担をかけてしまっていた。レイシアが泣くから、メイファは笑った。
「俺、メイに何も出来なかった。苦しかったのも、悲しかったのも、全部、一緒だったのに……っ」
メイファは一度も泣くことなく。いつだって笑って、微笑って……彼女自身が、見えなかった。
それがある日を境に、少しずつ、泣いたり怒ったりするようになって。
「ねぇルークさん。はじめてメイと会った時、あれ、初めてじゃなかったんでしょう……?」
はじめまして、と二人は言ったけれど。メイファの様子の違いに、気付かないはずがなかった。
そしてわかった。繋がった。
「メイが変わったの、ルークさんのおかげなんだよね」
自分には何も出来なかった。なのに。
「レイシア……」
悔しかった。誰より大切な人なのに。痛みも何もかも、分かち合えるのは自分なのに。
それからも、メイファは変わっていった。ルークの隣で幸せそうに微笑った。
「ルークさん……」
青い瞳が真っ直ぐそこにある。真剣に話を聞いてくれているのがわかる。
だから好きなのだと。だから嫌いなのだと。
二つの感情で想う。
「俺、メイが好きだよ。誰よりも好きだ」
大切な人。一番好きな人。ずっと傍にいて、この手で守りたい。
だけどそれは儚い願い。幼いままに育ってしまった心。
「でも俺じゃダメなんだ! 俺じゃメイを守れない……」
無力に泣いて、強くなりたいと思った。だから騎士になると決めた。
それでも……自分はまだ非力で、力だけでは守ることが出来ないものもあると知って。
メイファに必要なのはルークだと、わかってしまっているから。
――だからお願いします。どうか、どうか。
「メイを助けて……ッ」
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