コールダリィ王家に属する騎士たちは、懸命の捜索を続けていた。
――あの日から幾日経過したのか、時間感覚もなく。
日常は何事もなく過ぎていくけれど、一部の者たちにとっては無意味な時間にすぎず。
静かな部屋にノックの音が響く。
「レイシアです。戻りました」
声の調子からアイラは内容を察した。――進展は、ないのだ。
ホーリスが気遣わしげな顔になるが、何も言わず外へと声を掛けた。
扉が開き、心なしか線の細くなった姿が現れた。
「報告します。フォスター隊一班発見なし、グレイズ隊三班四班発見なし、――進展、なし」
「……そう」
――今日もまた、変わらない現状を突きつけられるのか。
国王たちの提案で、ブレス率いる皆は騎士たちの連絡役となっていた。
何か発見、進展した際、メイファと近しすぎる為に勝手な行動をとる恐れがあると判断されたためである。
アイラもその意見を理解した。そして承諾した。もどかしくはあるけれど。――これ以上事件を大きくしてはいけないから。
当初、全ての報告は国王の騎士であるエルセルにし、アイラには知らされないことになっていた。
けれどアイラとブレスたちの抗議とそれに不安を覚えた者によって、今の形となったのだ。
「あと、オルスからの伝言です。こっちも変わらず、だそうです。……ちょっと用があるから、って」
数日に一度の割合で、オルスは少しの時間姿を消していた。
何をしているのか誰も知らないけれど、誰もそのことには触れない。その余裕はない。
――似合わない、静かな、湿ったような、空気。
外の涼しい風よりも、暖房のある部屋の方が寒いなんて……。
「……お茶、おいれしますね」
すっかり冷めてしまったお茶の入ったティーポットを手に、ホーリスは静かに部屋を出て行った。
「不思議、ね……」
ぽつりと呟くアイラにレイシアが首を傾げると、小さな微笑が返った。二人でいることが、彼女は小さく言った。
「昔からあたしもレイシアも、メイファと一緒にいることは多いけど、レイシアったら最初は傍に寄ってもくれなかったでしょ?」
それは、ここに来る前のことに関係があったのかもしれないけれど。
メイファから離れようとせず、時間が経ち慣れてきた頃には騎士たちと訓練をしていた。
だから、"アイラとレイシア"という二人だけの組み合わせはあまりないことだったのだ。
なのに――
「もう、慣れちゃったなんて、ね……」
――メイファを想う。
彼女の代わりに、今はホーリスがずっと傍にいるけれど、その存在自体が違う。人間に代わりなんてないから。
――重い息が出た。
城外の騎士たちと会った帰りだった。日は短く、太陽はすでに姿を隠している。
一日の結果を聞くのも、報告するのも、全てが気が重い。
毎日同じことの繰り返し、日に日に気分は滅入り。
表には出ないものの、苛立ちは膨らんでいく。
このままでは、という思いに焦りが生まれ始めていた。
大切な仲間のメイファ。レイシアの姉で、ルークと想い合う少女。
(―――このままではアイラまで……)
弱っていく。確実に。レイシアも同様に。
ルークは荒れるかもしれず、オルスも普段はああだが何をするか……。
らしくもない、と自分で思いながらもため息が出る。
そして、それは正面に通用門が見える道に差し掛かった時だった。
おぼつかない足取りの人影。
「―――メイファ?」
声に反応したようにゆっくりと振り向いたその姿は。
「メイファ!」
糸の切れた人形のように倒れる少女に慌てて駆け寄り、腕に抱え上げたブレスは、
己の中に広がる安堵感に、どこか他人事のように感じていながら、それでもやはり自分も心配だったのだと、思った。
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