俺には夢があった。
それだけが、俺にとっての全てだった。
――それを、あいつは涼しい顔をして打ち壊したんだ。
だから壊してやるのさ。今度は俺が、あいつの全てを!
さぁ、どうしてやろうか。
壊れろ。壊れちまえ。
俺はそのために何もかもを捨てた。
――お前を壊すために。
コールダリィ城下の廉技場で、15歳以下の騎士によるトーナメントが開催された。
特別貴賓席には第一王子クライブと第七王女アイラの姿があった。
傍にはクライブの側近シゼルと騎士デュー、アイラの騎士ルークとオルスもいる。
二人は王族の代表として、試合の行く末を見守っている。
このトーナメントを勝ち抜いた少年は、
王族やそれに近い貴族に仕える騎士となることが決まっている。それ以外にもこれはと思われた者は誘いを受けることになる。
自らの元へ迎えたいと思う者はいないかと、貴族も多数観戦しているのが見回すとわかる。
そのために警備も厳重だ。そこここに騎士や兵士が立っている。
ブレスとレイシアの姿が見えないのも巡回しているためだ。
「クライブ兄さまのお目当ては?」
「そうだなぁ、あのシンクレアという少年なんか面白いと思うな」
頬杖をついた兄の視線の先には、今の試合に勝利し笑みを浮かべる幼い少年。
「小柄なのに頑張ってるわね」
「まだ10歳だそうですよ、アイラさま」
「10!? どうりで小さいはずね」
デューの言葉にアイラは驚きと感心の混じった瞳で改めて少年を見遣る。
15歳以下とはいえ、この城下でのトーナメントまで勝ち残っているのは、ほとんどが年少で13歳くらいなのだ。
「レイシアを、思い出すわね……」
独り言のような呟きに、そうですねとルークが頷く。
「10にもなっていませんでしたから」
彼も思い出す。
幼い、少女かと見紛う細い身体で、必死に強くなろうと剣を振っていた。真っ直ぐに。ひたすらに。
ルークはレイシアの指導をしていたのだ。
「妹みたいに可愛いレイシアが騎士になるなんて言い出した時は驚いたよなぁ」
「怒られるわよ、女の子扱いなんかすると」
「ははっ、怒っても可愛いからいいさ」
楽しく言葉を交わす主たちに見えないよう、つんつん、とオルスにつつかれルークは耳を貸す。
何事かと思ったら……
「レイシアのこと懐かしんでるって、レイシア過去の人みたいだよね」
廉技場へ向かう道に、急ぐ少女の姿があった。
行き違う者たちは知らないが、王女アイラの側近メイファだった。
主のスケジュールを調整の後、皆の元へ向かっているところ。
思ったより手間取ってしまったので、もう残り試合は僅かかもしれない。
馬車を使った方が早かっただろうが、アイラもいないのだし、これくらいの距離を注目を浴びて、というのはメイファはしたくなかった。
……歓声が聞こえるほどに近づいてきた。
出入り口に立つ騎士に会釈をし、入る。中には顔見知りの者もいた。
――メイファは気付かなかった。
見つけた……
壊してやるよ。
奪ってやる。
大切なもの、守りたいもの、何もかも。
握りつぶしてやる。この手で。
幸せも喜びも、粉々に消し去れ。
壊れろ―――
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