運良く空き家があるということで、アイラたちはそこに泊めてもらうことになった。
そのことに、アイラよりも周りが安堵していた。
さすがに本人がいいと言っているとはいえ、王女を本当に馬小屋などに泊めるわけにはいかないのだから。
村人にわけてもらった食材をメイファとホーリスが料理している間にも、話は続く。
今度はレイシアの番だ。
間抜けにも、と彼は顔をしかめて話し出す。
背後から殴られ倒れ、城外に捨てられてから。
騎士たちを呼び戻そうとしていたメイファと、頼まれごとと言われて外に出されたホーリスと再会、合流。
メイファがコールダリィに向かったことはすでに話しているので、飛んで、残った自分とホーリスの話になる。
「それから俺たちは、メイが会ったって子に会ったんです」
「あの女の子……?」
出来上がった品からテーブルに運ぶメイファが、少しの驚きを見せる。
「うん。小さくて可愛らしい子」
メイファがいなくなったことに責任を感じていた。そしてレイシアは、アイラの姿まで見えなくなっていると知った。
「ああ、だからレイシアは城内地図を持ってたのか」
「地図?」
一人助け出された側のアイラが首を傾げた。
少女は下働きだったため城内の様子を詳しくは知らなかった。
けれど仲間を紹介してくれ、地図を得るという手助けをしてくれたのだ。
「それを頼りに、アイラさまがいらっしゃるであろう場所に見当をつけて向かったんです」
「壁ぶっ壊してね」
「えっ……」
オルスの付け足しに、何も知らないホーリスが驚き、緊急事態だったのだからとルークがフォローする。
破壊しつつ進んでいた本人は、我関せずといった様子でお茶をすすっている。
「わた、私……」
話を聞いているうちに気持ちが膨らんできたのか、手を止めたホーリスは俯く。
「私、本当に何も出来なくて……」
ホーリスは薄っすらと涙を浮かべている。……待つだけというのは、辛い。
彼女は前にも似たような経験をしている。今回のは、もっと酷い。
「そんなことないよ。俺一人だったら地図も手に入れられたかどうか……」
「荷物だって守ってくれてたんでしょう?」
レイシアとメイファの言葉にも首を振り、でも、とホーリスは言う。
「荷物と言ってもわずかなものですし……」
メイファとホーリスが城外へ出るときに持っていた、幾らかだけの所持物。
レイシアは突然のことだったために何も持っていなかった。
「ホーリスがいなければ、それだってなかったかもしれない」
「そうよね。お金も何も、全くなかったらやってられないもの」
「……それしか、私には……」
自分に出来ることなど、そんな些細なことしか。
「だったらそれでいいじゃん」
あっけらかんと。
オルスは何でもないこと、当たり前のことのように、表情も変えずに言う。
「出来ることしたんなら」
慰めようとか、励まそうとか、しているわけでなく。特に気遣っているわけでもなく。
あまりにも普通で。
その様子にホーリスは目を瞬かせ、こくりと小さく頷いた。
「何かしなくちゃ、じゃなくて、何が出来るか、でもなくて。大切なのは、自分が何を思って何をしたのか、ですよ」
やんわりと、ルークが微笑む。
――ああそうだった。ここはこんな場所だった。
アイラがくすりと笑う。
「ホーリス、メイファ。もういいのかしら?」
「あ、はい」
「これで全部です」
それじゃあ、とアイラは皆をイスに座らせる。
「いただきます」
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