第35話 出発と回想
「アイラさま……っ!!」

 ノックをした瞬間慌しくドアが開けられ、飛びつかんばかりのホーリスに出迎えられた。
「皆さま、おかえりなさいませ。ご無事で……何よりです」
 目を赤くしたその表情に、アイラは笑顔で応えた。


 ――アイラが囚われ、皆がバラバラになっている時のことは、全員一致しない。


 それぞれ話を聞かせてほしいと言うアイラに、
「それなら、馬に揺られながらでも」
 とルークが提案し、四頭の馬は出発した。









 先頭を行くのはレイシア。背後では、まずブレスたち三人の話をしている。
 話し手は、ブレスやオルスが務めるわけもなく、もちろんルーク。


 国の危機と聞き、アイラに送り出されてからひたすらに馬を駆り、馬を潰してしまった甲斐あってか、 城下に近い町リタニアにまで辿り着いた。
 だが城に近づくほどに危険な気配はなく、平穏そのもの。常と変わらぬコールダリィであった。
 これはおかしい、と再びイラテイトへ戻っている途中に。

「メイファさんに会ったんです」
「はい。もうお名前は出してますが、エイファルンさん、エイルさんに馬に乗せていただいて」

 イラテイトの雑貨商、エイファルン=ガイン。優しく、時にいたずらっぽく笑う人だった。
 騎士たちと合流を果たしたのは、カリヤという村近く。……まだイラテイトよりは城に近い場所だった。

「早く戻らなくちゃいけないのに、まだまだ時間が掛かる……」
「そう思っていたら、エイルさんが」


 彼は、言ったのだ。

『メイファさん、力使えるよね』

 驚く面々にエイルは首を傾げ、でも跳んだことはないのかな、と続けた。
 とても自然で、当たり前のことのように。何故力のことを、と思ったが、落ち着いて気配を探ってみると、 彼にも何らかの力があるのを感じた。だからわかったのだと、メイファは知る。
 普通力なんて使わないもんね、仕方ないか。と彼は呟く。

『だけど試してみたらどうかな? その価値はあると思うんだ』
 迷うメイファに、彼は決め手になる一言を続けた。
『コントロールの手伝いはするよ』
 と――。


「それで早く来れたのね?」

 ――沈む陽が、赤く大地を染め渡していく。
 この季節、日暮れは日に日に早くなる。

「レイシア」
「はい、今日はあの村に泊まるんですね」
「ああ」

 落ちないよう前にアイラを座らせたブレスの声に、レイシアは応じた。
 さほど遠くはない場所に村が見えていた。

 とりあえず今日は一晩の宿を探して休もう。
 そんなに大きくはない村だから、宿屋はないだろう。王女たちには悪いけれど、 簡単に正体は明かせないのだから仕方がない。どこか空いている場所を貸してもらおう。

「別に構わないわよ。馬小屋だっていいし」
 アイラが事も無げに言うものだから、周りの皆が驚いてしまう。
「アイラさま……?」

「いいのよ」
 だって。



(一人じゃないもの)












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