思わずため息が出た。それは安堵なのか何なのか、自分でもよくわからない。
どうにかしなければと思っていた物事に、とりあえずの終止符を打った。
丁度良いからと、アイラたちの騒動に便乗して、といった形になったけれど。
彼は遥か遠くを見上げた。――相変わらずこの国の空は白っぽい。
(なあ、俺たちは元気にやってるよ。迷惑も掛けてばっかだけど。
……でも、ああもっとワガママ言い合ってもいいのかもな。
俺はじいさんばあさんの孫で、あいつも二人の孫だ。俺たちは兄弟なんだから……)
互いに言いたいことは言うし、やりたいようにやってはいるけれど、どこかでは遠慮が残っているのかもしれないな、と思う。
今度また、ゆっくりと話し合ってみようか。
――シィ。
聞き慣れた声が、聞き慣れてしまった聞こえ方で、名前を呼ぶ。
――どうなった?
頭の中や耳元に響くように聞こえる声。
「お前なぁ……ソレ使うなっつったろーがぁ」
――大丈夫だよ。心配性だなぁ。
こちらの気持ちなどお構いなしに、声はくすくすと笑う。
それで、と促され、シライザは今の出来事を話す。
乱暴ながら現れた仲間に助けられ、王女は無事解放されたこと。
よかった、と声は安堵の息を漏らした。
お人好しだよなぁ、と思ういつものシチュエーションだ。
――手伝えてよかった。力になれたんだね。
「はいはい。それはよかったですネー」
力は使うなと、何度も言っているのに。
その力は後天性のもの、使い続ければ生命を削る。
それを心配しているというのに……。
彼にとって、彼を失うことほどに恐いものはないから。
――ねぇシィ。たまには帰ってきなよ。
「……って。今こっちにいないの誰だよ」
シライザは今もイラテイト城下にいる。家も近い。だからどうせなら寄るかな、と考えてもいる。
――俺かな。
「かなじゃなくてお前だっての。……なんなら迎えに――」
――ね、シィ。コールダリィって綺麗なところだね。
「……ああ」
「帰ったらお父さまに文句言ってやらなくちゃだわっ」
「陛下がお悪いわけでは……」
「だけど原因の一つではあるもの」
アイラはブツブツと呟く……わけもなく、言い放つ。
国王さまもお気の毒に、と何人かが苦笑した。
城に戻れば、アイラは本当に文句を言うだろう。それも盛大に。
その光景が容易に想像出来て、オルスなどは笑っていた。
「久しぶりの外は気持ち良いけど、でもやっぱり違うのよね」
よく知った空気とは違うにおい。風の違う感触。空の違う色。
コールダリィがいい。強くそう思う。
「今から帰るんだ」
声に、うんと頷く。
「帰りましょう。……一緒に」
一緒に。
当たり前だとずっと思っていたけれど、そうじゃなく、そうだとしてもとても大切なこと。
ブレスの服の袖をつかみ、見上げる。
「アイラ?」
――この声だ。
ずっと聞きたかった。聞きたくて、聞けて嬉しくて。
泣きそうに笑う。
「ずっと……ね」
何を言いたいのか自分でもはっきりしない。けれど思うのだ。
ずっと。
「――ああ」
ずっと。
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