「別にもう会いたくもなかったんだが、ま、しゃーねぇよな」
なんでもないことのように言うと、瓦礫のように崩れ重なった場所に腰掛ける。
「貴様、またよくものこのこと……!」
「お前が悪いんだゼ。あいつらに手ぇ出すから」
「は……!?」
笑んで喋る表情も、冷たい瞳を強調するばかり。
悠々と脚を組み、形ばかり見上げる、見下す視線。
「俺は、あいつらが気に入ってんの。わかるカナ、馬鹿王子サマ?」
「貴様……!!」
重なる暴言に声を荒げ、扉に視線を走らせるバロスの様子に、軽い調子で声が返る。
「おーっと。人呼ぼうたって無駄だぜ。俺特製の壁、張り巡らしてっから」
――禁忌の力。
バロスは息をのんだ。男は口元で笑う。
「お前には、ちーっと、話、さしてもらいましょーかね」
「ああ、来ましたよ」
ルークの声に目を遣ると、小走りで遣って来る人物が。
アイラは腰に手を当て軽く睨む。
「もう、何やってるのよ。早く帰りたいのよ、あたしはっ」
コールダリィへ。元の生活、いつもの日々へ。
……こんな落ち着かない場所から抜け出して。
「……ごめんなさい、迷子になった」
「はぁ!? ……マイペースにもほどがあるって」
「でもオルスさまらしいと言えばらしいと言うか」
レイシアは呆れ、メイファは苦笑する。ブレスは表情を変えることなく、
ルークは落ち着いた微笑を浮かべている。
息を吐き出し、アイラは歩き出す。
「まぁでも、これでみんなそろったわね」
みんな、という単語にブレスが反応する。ホーリスは、と。
頭の回転がまだ鈍っているのか、アイラはそこでやっとその足りない人物の存在に気付き、
メイファから宿にいるとの答えを得た。じゃあ、とアイラは言う。
「合流して出発よ! 他の人たちは……」
侍従、侍女は。
「この国に費用負担してもらって、送ってもらうことにしましょうっ」
なんと言っても、あれだけのことをしたのだから。と、皆が同意を示す。
同意しながらもメイファは、でもと続ける。
「この国にもいい方はいらっしゃいましたよ。エイルさんにはお礼をしないと」
「誰?」
面識のないアイラは首を傾げる。
――彼はまだコールダリィにいるだろう。
あのまますぐイラテイトに向かっても、馬ではまだ随分かかる。それに、しばらく国を回ると言っていた。
「ああ、あの――」
「うさんくさい雑貨商」
「……………オルス」
「ってルークさんが思った人」
「思ってないから」
呆れたような困ったような声で否定するが、そうかなぁとオルスは首をひねってみせる。
「だって目、怖かったし」
「それは急がなければならなくて焦っていたからだろう。何を人聞きの悪い」
「んー……オレてっきりメイファといたからヤキモチかと」
「子供じゃあるまいし」
なんとなく、レイシアはそっぽを向く。複雑そうな表情を浮かべて。
アイラはうーんと小首を傾げる。
「……そのわりには笑顔で必死に抵抗してるようにも見えるわよ」
「っ、アイラさままで……」
ルークの様子にアイラが笑い出し、みんなで笑う。
そうこうしているうちに城外への扉へと遣って来ていた。
オルスは息をもらす。
(オレの居場所。……恐れるのは壊れること)
――失っても、守りたいと。
叶うならば、自分の所業を知り、傷つくことのないように―――――……。
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