第27話 抵抗をと試み
 エイファルン=ガインという人物は、イラテイトの雑貨商と名乗り、隣国を渡り歩くこともあると言った。 だから、馬を持ち、伝言を運ぶことも、連れて行くことも出来る、と。


「……コールダリィにも行かれるのですか?」
「うん、何度か行ったよ。穏やかでいいところだよね。そろそろまた行こうかと思ってる国のひとつだよ」

「――あなたは何故力を貸してくれると言うんですか?」
「困った時はお互い様、って言うでしょ?」

 メイファとレイシア、二人は視線を交わす。――嘘を言っているようには見えないが。
 慎重にせねばならない。ならない、とは思うのだがそうとばかりは言っていられない状況で。

「城下の方にも、行かれますか? そう、お願いしてもよろしいですか?」
「構わないよ。行ったことはないけど、一度行ってみたいと思ってたし」
 快く承諾する。……本来ならば、こういう話こそ疑うべきなのだけれど。



「――――――――――連れて行って下さい」











 ノックがあって、現れたのは、言うまでもなく。
 光が当たってキラリと輝く銀は、とても綺麗とは思えない。
 その顔も表情も、何もかも、見飽きた。

「そろそろ決心はおつきになりましたか?」

「―――」
 何のことですか、と問い返すことはすでにしていた。答えは、思った通りのものだったけれど。
 睨み付ける。口なんてききたくないけれど。


「そろそろ、解放して下さい。こんな所に閉じ込められていては考えることも出来ないわ」


 昨日は、何故自分なのか、と問うた。その前は、何を求めているのか、と問うた。
 これらもまた、答えなんてあるようでないようなものしか返らなかった。

「閉じ込めているだなどと、そんな大げさな。不自由はないかと思うのですがね」

 その言葉にアイラは顔をしかめる。
(――部屋に放り込んだまま外に出ることを許さないって言うのに……!?)
 確かに、足りない物はない。この場になくても、一言告げるだけで届けられる。


 ……だけど、だから何だと言う。


「あなたは今のこのあたしの毎日が自由だとでも?」
「ええ。快適でしょう」
「………」


 ――毎日毎日、繰り返し。












「……もう、ホントに大丈夫かなぁ」


 ほとんど即決で、しかもいくら急ぎとはいえ用意もそこそこに、 すぐさま出立した姉に、レイシアは不安を抱かずにはいられなかった。
 エイファルンという人物は悪い人間ではなく信用できそうだったが。そう判断したからこそ、 二人のコールダリィ行きを、多少しぶしぶながらも認めたのだが。

「心配されるお気持ちはわかりますが……しっかりした方ですし」
「――だってメイだよ?」
 お茶を前にイスに座ったまま、チラリと視線を上げる。

「メイはね、ホーリスも知ってるように、おとなしくて消極的だったりするけど、 しっかりしてるし芯強かったりするよ。するけどさ、ドジったり暴走したりさ。――メイだから」

 メイファだから、という理由で言い切られるというのもどんなものなんだろう、と思ってしまう。
 あえて反論はしないし、したところで聞いてもらえるとも思えないが。

「でも……うん、なるようにしかなんないんだよね」
「……ですね」

 二人して、自らの手元を見つめる。紅いはずのお茶は、この国特有なのか安物だからなのか、 濁った色で表情をゆらりと映している。
 そこそこの香りはあるのだが、楽しむ気にはなれない。当たり前だが。

「俺たちに出来ることを考えよう」
「はい。……待ってるだけなんて、出来ませんからね」
「少しでも、何かしなくちゃいけない。アイラさま、頑張ってるだろうから」












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