第25話 幼い。遠い。そして独り。
 つまんない。面白くない。腹立たしい。苛付く。


「――――――なんなのよ、本当に」


 閉じ込められて、三度夜を越えた。

(悪態吐くのもいい加減飽きたわよ……)

「メイファ……どうしてるかしら」
 メイファ、レイシア、ホーリスの三人はどう引き離されたかもわからない為に尚不安だ。

「て言うか、これってみんなして嵌められたってことよね」
 はあ、とため息。……自分たちは馬鹿なんだろうか。
 自国の危機と聞いて、疑いもせず、いてもたってもいられなくなった。

「―――――早くしなさいよ、馬鹿……」

 部屋の隅で膝を抱えてみる。無駄に広い部屋だけに、落ち着かない。
 自分には似合わないと思いながらも、精神的にマシになる気がするのだから仕方がない。


 もうずっと、一人でいることなんてなかった。いつも誰かがいた。
 メイファとレイシアは幼い時から一緒に育ったし、ブレスも長い間一緒にいる。

(耐えられない。)

 なんだかカラッポになっていく気がする。考えなきゃいけないことが、面倒に思えてくる。
 だけど考えて、考えて……だけど、一人じゃどうしようもなくて。




 ―― 一人きり。




 独り。


 幼い自分。大好きな家族。幸せ。

 でも……寂しい。


 ――王女という立場。


 物心ついた時にはすでに囚われていた囲いの中。

 王女さま。

 アイラさま。


 あたしはコールダリィ第七王女アイラ。


 笑顔で。

 元気に。

 明るく。


『アイラさま』


 僅かな救いは、遠縁の、自分より少しだけ幼い姉弟。
 笑顔で話しかけてくれる。……見え隠れする傷はあるけれど。
 だけど……

 ――"さま"なんてやめてよ。アイラって呼んで。

 少女はふるふると首を振り、少年もその手を握ったまま小首を傾げた。
 呼び方だけだから、と思ったけど、それでもそこに何か隠されているようで、苦しかった。


『王女』


 嫌い。


『王女』


 嫌いよ。


『王女』


 ――何度も何度も、彼はそう呼ぶ。

 口数も少なく、感情もあまり見れないこの幾分年上の少年は、出会ってから常に傍にいた。
 何を話すわけでもなく、するでもなく、近くにいる、それはまるで監視されているようで。
 苦手だった。恐いとさえ思った。けれど彼は。


『王女』


 どんな態度を取っても、何を言っても、どんなことが起きても。
 いつだって何も言わず、表情を変えず、そこにいた。いてくれた。
 それがどれだけ力になったか。どれほど救われたか。

 今になって気付かされる。強く思い知らされる。


 ――護られていた。


 ずっとずっと。どんな時も。
 いつの間にか気付けば、彼を中心とする自分の護衛騎士として、一人、二人と仲間は増えて。

(なんでこんな……なんで………)

 遠い。

 誰もいない、しっかりしなくちゃ、と、言い聞かせてみても。


「―――――――――護って、くれるんでしょう……?」


 どんな時も護ると。たとえ離れることがあっても呼べば駆けつけると。
 そう、言っていたのに。言ってくれたのに。




 ―――――――――――








『アイラ』












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