つまんない。面白くない。腹立たしい。苛付く。
「――――――なんなのよ、本当に」
閉じ込められて、三度夜を越えた。
(悪態吐くのもいい加減飽きたわよ……)
「メイファ……どうしてるかしら」
メイファ、レイシア、ホーリスの三人はどう引き離されたかもわからない為に尚不安だ。
「て言うか、これってみんなして嵌められたってことよね」
はあ、とため息。……自分たちは馬鹿なんだろうか。
自国の危機と聞いて、疑いもせず、いてもたってもいられなくなった。
「―――――早くしなさいよ、馬鹿……」
部屋の隅で膝を抱えてみる。無駄に広い部屋だけに、落ち着かない。
自分には似合わないと思いながらも、精神的にマシになる気がするのだから仕方がない。
もうずっと、一人でいることなんてなかった。いつも誰かがいた。
メイファとレイシアは幼い時から一緒に育ったし、ブレスも長い間一緒にいる。
(耐えられない。)
なんだかカラッポになっていく気がする。考えなきゃいけないことが、面倒に思えてくる。
だけど考えて、考えて……だけど、一人じゃどうしようもなくて。
―― 一人きり。
独り。
幼い自分。大好きな家族。幸せ。
でも……寂しい。
――王女という立場。
物心ついた時にはすでに囚われていた囲いの中。
王女さま。
アイラさま。
あたしはコールダリィ第七王女アイラ。
笑顔で。
元気に。
明るく。
『アイラさま』
僅かな救いは、遠縁の、自分より少しだけ幼い姉弟。
笑顔で話しかけてくれる。……見え隠れする傷はあるけれど。
だけど……
――"さま"なんてやめてよ。アイラって呼んで。
少女はふるふると首を振り、少年もその手を握ったまま小首を傾げた。
呼び方だけだから、と思ったけど、それでもそこに何か隠されているようで、苦しかった。
『王女』
嫌い。
『王女』
嫌いよ。
『王女』
――何度も何度も、彼はそう呼ぶ。
口数も少なく、感情もあまり見れないこの幾分年上の少年は、出会ってから常に傍にいた。
何を話すわけでもなく、するでもなく、近くにいる、それはまるで監視されているようで。
苦手だった。恐いとさえ思った。けれど彼は。
『王女』
どんな態度を取っても、何を言っても、どんなことが起きても。
いつだって何も言わず、表情を変えず、そこにいた。いてくれた。
それがどれだけ力になったか。どれほど救われたか。
今になって気付かされる。強く思い知らされる。
――護られていた。
ずっとずっと。どんな時も。
いつの間にか気付けば、彼を中心とする自分の護衛騎士として、一人、二人と仲間は増えて。
(なんでこんな……なんで………)
遠い。
誰もいない、しっかりしなくちゃ、と、言い聞かせてみても。
「―――――――――護って、くれるんでしょう……?」
どんな時も護ると。たとえ離れることがあっても呼べば駆けつけると。
そう、言っていたのに。言ってくれたのに。
―――――――――――
『アイラ』
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