第23話 独りカゴの中
 メイファがいなくなって、一日が経った。気付けばホーリスもいない。
 アイラに残っているのは数人の侍女、従者と、騎士のレイシアだ。


 ――そのはずだが。


「レイシア? レイシア、どこなの? ……………レイ?」


 レイシアの姿までが見えない。



 ――イラテイトに来て、三日目の朝だった。



 アイラは持って来ていたクッションを抱え、ベッドに座り込んだまま動かない。
(おかしい。)
 と思う。強く思う。

 到着してすぐに騎士たちがいなくなり、次に側近、次に侍女、そして最後の騎士。
 自分に最も近い者が全員、次々と消えていった。後の三人は理由も何もわからない。

「違うわ。レイシアはちょっとどこかに行ってるだけかもしれないし。二人だってそのうち戻ってくるわよ。そうよ……」

 口に出してはみるものの、不安と否定の言葉ばかりが残る。
 ……扉を叩く音がして、駆け寄り開く。

「レイシア? メ――」


「おはようございます、アイラさま」


「…………バロス、殿下…………」
 こんな時に。一番見たくもない。――胸の悪くなるその笑み。

「おや、いけませんね。顔色がお悪いようです。大丈夫ですか?」
「……え、ええ」

 バロスはとても楽しげに、上機嫌に笑む。
「では食事に参りましょうか」















「イ……レイっ!」


 強く揺すられて、馴染むというよりは刻まれている声に呼ばれて、レイシアは目を開けた。
 ぼんやりと、段々とはっきりとしてくる姿。自分以上に見慣れたもう一人の自分。

「……………メイ?」

 息が触れる。安堵のため息だ。よかった、と呟きを聞く。

「どこも痛くはない?」
「あ、うん、何も……痛ッ」
「急に動くとダメですよ、レイシアさまっ」

 頭を押さえるようにしていたレイシアを労わる声。少しかすれている。
「後頭部にコブが……殴られたような痕がありますから……」

「ホーリスっ。二人とも、どうして……?」
 レイシアが二人の顔を見ると、メイファとホーリスはチラリと互いを見た。

「謀られたようですね……」
「な……っ」
「私もホーリスも、追い出されたみたいなの。中に入れないし、レイは倒れてたし……」

「――そうだ」


 思い出した。


「俺、アイラさまの部屋を出た後誰かに襲われて……!」

「―――――」


 これは、どう考えても。


 ふらりと、レイシアは立ち上がる。

「戻らなきゃ……」

 こんな所にいてはいけない。ゆっくりしている場合じゃないじゃないか。
(俺だって騎士なんだ。俺が守らなきゃならないのに。みんないないんだから……)


「……ブレスさまたちと」


「メイ?」
「ブレスさまたちと、どうにかして連絡は取れないかしら……」
「ブレスさん? どうして――」


 メイファは、何故自分がアイラの元を離れたかを話した。
 あの幼い少女のこと。嘘を言っているようではなかったこと。
 自分はそれを信じると―――。


「計画的すぎる……アイラさまが心配だ」














 もう逃がさない。あなたは私のものだ……!!












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